北海道開発技術センター

【decマンスリー Scenicbyway HOKKAIDO】 NOWADAYS
(2004.12)
シーニックバイウェイプログラム 研究報告

ハンカ氏と共に恵庭市を視察
地域と行政が連携し、沿道景観の保全・改善による「美しい景観づくり」、「活力ある地域づくり」、「魅力ある観光空間づくり」を行う施策〈シーニックバイウェイ北海道〉。来年度本格始動をめざし、準備がすすめられています。主要な役割を担うdecにおいても、より専門的な知識や情報の集積、活動団体との連携をはかり調査研究を重ねています。 去る9月7日から14日まで、米国リソースセンター所長ヘンリー・ハンカ氏を迎えて開催した勉強会、活動団体との交流会、および米国シーニックバイウェイの概要についてご報告します。
(dec地域政策研究室/田邊慎太郎・山田直美)
米国シーニックバイウェイプログラムは、連邦政府指定のルートが96路線ある。この中から、6ルートと、ベンチマークになるであろうアメリカバイウェイリソースセンターとオレゴン・シーニックバイウェイプログラムについて紹介する。

■アメリカバイウェイリソースセンター(ABRC)

アメリカバイウェイリソースセンターは、ミネソタ州の北側、五大湖の一つであるスペリオール湖畔にあるダルース市に事務所を構えている。ABRCは1998年に設立され、現在、8名のスタッフがおり、バイウェイのコーディネート、出版や全国会議の運営などを行っている。また、ABRCはアローヘッド地域開発機構の一部署として設置されているが、その事業費は米国連邦道路庁からの委託事業を収益としている。現在3名で96ルートの連邦指定のシーニックバイウェイに技術的支援を行っており、中長期の出張をくり返しながら全米を回っている状況である。今年は、バイウェイのマネジメントを地域が主体的にとり組めるように、パワーワークショップと呼ばれる研修会を開催した。研修会は4日間のプログラムで5箇所延べ200人が参加し、資金運用(Funding)、組織管理(Organization)、資源の活用(Resources)について、講師からの講義や参加者同士の討議をとおして学ぶものである。米国のシーニックバイウェイは次回の認定で40ルート程度を追加指定する予定であり、今後、さらにABRCの役割が重要となっている。

 
■オレゴン・シーニックバイウェイプログラムの概要

アメリカ西海岸に位置するオレゴン州は、広大な土地に海岸、砂漠、河川など固有で多様性に富んだ景観を形成している。これら多様な景観を有するオレゴン州では、数多くのバイウェイが指定されている。州のシーニックバイウェイプログラムの地域コーディネータであるPatrick Moran氏にオレゴン州におけるとり組みについて話をうかがった。
オレゴン州では、州の関係機関、連邦政府機関、自治体、各ルートの委員会代表者などさまざまな立場で構成された州の委員会を設立しており、各ルートにも委員会が設立されている。ルートの指定を希望する地域はコリドー運営計画を作成し、地域の合意を取り付け、州の委員会に申請する。コリドー運営計画には「何をしなければならないか」「マーケティングではどのようなことを行うか」具体的なガイドラインが記されている。
オレゴン州では、それぞれの固有の資源を活かしたバイウェイが指定され、同じテーマをもったルートは指定されない。州では、指定されたルートを3年毎に評価し、ルートの景観維持をはかっている。


狭い駐車帯がいくつもあるオレゴン・コースト
■ノースショア・シーニック・ドライブ

ノースショア・シーニック・ドライブは、ミネソタ州の北側にあり、五大湖の一つであるスペリオール湖の南岸に位置するルートである。ミネソタ州の気候は北海道と似た気候であり、四季を通じて織り成す美しい景色が魅力のルートである。スペリオール湖近郊には鉱山があり、スペリオール湖はそこで産出される鉱物の重要な舟運の航路として繁栄してきた。そのため、このルートには重要な灯台が設置され、船の安全を守ってきた歴史を有している。
その中の一つの灯台であるThe Two Harbors Light Stationは、最も古い灯台であり、歴史的な建造物の一つとして保存されている。保全のために、地域の歴史協会が運営し、観覧料や土産店などをもとに運営している。特に、灯台を改築し、B&B(宿泊と朝食だけの施設)として活用し、年間で80パーセント程度の回転率となっているのは、非常にユニークなとり組みであった。このほかにも、州立公園では、100パーセントリサイクルの案内所を建設するなどしており、資源価値の向上にとり組んでいる。近年では、この地域の資産価値が高まり、別荘地として人気が高まり、地価の上昇などの効果が現れている。


最も古い灯台。B&Bとして活用している
■ヒストリック・ルート・66

ルート66はTV映画の舞台となり、その昔一世を風靡したシカゴからロサンゼルスに至る路線である。このうち、ヒストリック・ルート・66としてシーニックバイウェイに指定されているのは、ニューメキシコ州の972キロメートルである。今回訪れたアルバカーキ市内では、ゴールドラッシュからモータリゼーションの発展当時に繁栄したモーターロッジや劇場、ネオンで装飾された看板などが保全されている。
デ・アンザと呼ばれるモーターロッジは、経営の悪化によって閉鎖されてしまったが、歴史的価値が高いことからアルバカーキ市が買い取り、地域のNPOがその活用計画やその方針を受け入れるデベロッパー探しなどを行っている。すでに、ルート66の公式ルート番号は消滅しており、個人主義的な住民が多いので難しい活動環境である。しかし、ルート66の価値を保全しようとする活動団体の姿勢は見習うべきところが多かった。


モーターロッジ「デ・アンザ」
■ヘメス・マウンテン・トレイル

ニューメキシコ州のアルバカーキ市近郊の国立公園内を通るルートである。ヘメス(Jemez)とは、数多くある原住民族の一つの名称であり、ルート内にプエブロ(Pueblo)と呼ばれる集落を有している。ヘメス(Jemez)の民族は、多くの民族が現代的な生活様式に移っていく中、昔からの生活様式を残したまま生活している数少ない民族である。彼らの生活を脅かさずに、旅行者も自然と調和した生活に触れられるようにシーニックバイウェイプログラムによって案内所の整備などがされている。また、このルートは世界でも有数の規模のカルデラを持ち、ルート全体を通して歴史的、自然的な価値が高いルートである。


ヘメス・マウンテン・トレイルにあるヘメス族の住居
■パシフィック・コースト・シーニック・バイウェイ
オレゴン州で最初に指定されたパシフィック・コースト・シーニック・バイウェイ(オレゴン・コースト)を視察した。同ルートは、オレゴン州の西海岸のオレゴン・コーストを走る全長356マイル(584キロメートル)のオール・アメリカン・ロードであり、海岸、砂丘、山間部などの多様な景観域を構成しているルートである。
ヤクイナ・ベイ・ステート・レクリエーション・サイトは、美しい橋と灯台の眺望ポイントのひとつであり、解説板や灯台を利用した博物館が充実していた。また、世界最大の海食洞・トドの生息地としても有名なシーライオン・ケーブでは、数マイル毎にいくつもの狭い待避所が整備され、灯台を撮影する写真スポットになっていた。これら眺望ポイントは、デザインも周囲の景観と調和した簡素なつくりになっており、華美になりすぎていないところが印象的だった。また、幹線道路には色ごとに整理された案内標識が整備され、大変わかりやすかった。


オレゴンコーストのビューポイント。簡素な解説板がある
■ヒストリック・コロンビア・リバー・ハイウェイ

ワシントン州との境界にあるコロンビア川渓谷を走る全長70マイル(112キロメートル)のオール・アメリカン・ロードである。コロンビア渓谷を一望できる雄大な眺望、滝を中心とした豊かな自然環境、州立公園内の多様なレクリエーション資源、歴史的資源などを有している。
国内でも有数の規模を誇るマルトノマの滝は、2つの水流が豪快に流れる美しい滝であり、滝の中腹にかかる橋からは轟音と水しぶきによって滝を身近に楽しむことができる。歴史的建築物を利用した石造りのロッジに併設されたビジターセンターには、ボランティアが常駐し、歴史的資料を展示していた。また、コロンビア渓谷とロウィーナ・ループスを一望できるロウィーナ頂上は、展望台自体はとても簡素なつくりであるが、自然や歴史、地形の解説が記された解説板が充実し、景色だけではなく地域の歴史や成り立ちを十分理解することができる。


ロウィーナ展望台
■クレオール・ネイチャー・トレイル
クレオール・ネイチャー・トレイルは、ルイジアナ州の南西部に位置するメキシコ湾岸沿いに広がる泥炭地の入り江や湿地帯に位置する。ルートには、数百万羽の野鳥、ワニ、多くのほ乳類動物などが生息する。同ルートでは、近年のエコツーリズムへの関心の高まりとエコツーリズムという市場に焦点をあてた優れたマーケティング行動計画により、2003年ベストプラクティスのマーケティング部門を受賞している。視察では、同トレイルの代表・副代表である地域の方々とマーケティングを担当する南西ルイジアナ・コンベンション観光局の方々にガイドをしていただきながらルートを巡った。
マーケティング行動計画で最も優れたとり組みは、ルートの優れた湿原環境や豊かな生態系に関する記事を書いてもらうために、トラベルライターや記者、カメラマンをトレイルに招き、ガイドをつけてルートを視察したり、すぐにでも記事が書けるルートの写真や地域資源の情報が納められたマーケティングキットを配布し、情報提供を行ったことだ。そのほかにもさまざまな層に語りかけるツールや語り手となるガイドの育成、ホスピタリティ・プログラムなどを実施している。
ルートをガイドしていただいた委員長、副委員長に長くつづける秘訣を伺った。
「30年間にもわたり長く続ける秘訣は、たくさんの人が来てほしいという気持ちとパートナーシップ、コミュニティの仕組みである。私たちはここで生まれ育った。この土地の歴史を誇りに思っている。この場所をもっと多くの人に知ってもらいたい。訪れた人々にこの地域の湿地や生き物について説明することによって、この場所の魅力を多くの人に知ってもらうことができる」
この言葉どおり、シーニックバイウェイプログラムは景観整備や案内標識などの基盤整備ももちろん重要なプロジェクトではあるが、そのためにもルートを支える熱い思いをもった地域の方々の力が一番重要であると改めて感じた。


ルイジアナの湿地帯

今回、ABRCハンカ所長に同行し、さまざまなお話を聞かせていただくことができました。講演内容からももちろん、シーニックバイウェイプログラムやそこに携わる人々への熱い思いが伝わってきました。講演の中から引用すれば、「バイウェイ組織は私たちのプログラムの心であり魂である。プログラムの成功は地元で暮らすバイウェイ組織の方々にかかっている。地元のバイウェイ・グループがうまくいかなければ、プログラムの成功はありえない」と語っています。現在、国土交通省が検討している「シーニックバイウェイ北海道制度」において、当センターがどのようなお手伝いができるかいまのところ明確ではありませんが、地域で活躍する人々が満足し楽しんで活動できる制度となることを期待し、私たちも努力したいと考えています。今回の報告にはABRCはじめたくさんの方々にご協力いただきました。感謝申し上げます。

バイウェイの活動は、多くの友人とともに進む旅
講演(1)「シーニックバイウェイプログラムとアメリカバイウェイリソースセンターについて」

9月8日札幌グランドホテル、出席者18名(北海道開発局、道内建設コンサルタントなど)
アメリカに州際道路(Interstates Highway)が整備されはじめると、旅行者は都市間を中心に行きかうようになり、したがって、旅行者は都市間にある素晴らしい資源を見落としてしまうこととなった。シーニックバイウェイプログラムによって、旅に新しいアイデンティティを与えることができた。
シーニックバイウェイプログラムは、21のオールアメリカンロードと75のナショナルシーニックバイウェイが指定されており、総延長が2万5000マイル(約4万キロメートル)となっている。TEA-21では、連邦政府から6年間で1600のプロジェクトに対して、2億2000万ドルが助成金として配布された。このプログラムは、国立公園や国有林、地方部の路線が指定されており、都市部のための施策ではなく、北海道のような地方部のためのプログラムとなっている。シーニックバイウェイに指定されるには、ユニークで、かけがえがなく、明白にその地域の特徴を示している価値ある資源を有している必要がある。
リソースセンターは、このような連邦政府指定のシーニックバイウェイについて地元のバイウェイ組織と連携し、支援することが役割となっている。現在、8名のスタッフで96のルートを支援している。主に、情報や専門知識の提供、人的ネットワークの紹介を行っている。シーニックバイウェイに携わるみなさんに、「道路を利用するとき同様、皆さんのバイウェイ活動は一人旅ではありません。バイウェイの旅は、多くの友人とともに進んでいく」ことを忘れないよう呼びかけている。
 
重要なポイントのひとつは、両端にあるバイウェイの入り口
講演(2)「シーニックバイウェイデザインガイドについて」

9月10日(社)北海道開発技術センター、出席者15名(北海道開発局、道内建設コンサルタントなど)
シーニックバイウェイでまず考えるべきことは、そのバイウェイの特徴を表す視覚的効果についてである。特に、沿道施設はバイウェイに彩を添えるために、デザインは細やかに配慮されなければならない。これはロゴ、色、素材、標識、グラフィックスタイルで表現される。何をするにしても、利用者がその道路の印象をより一層、明確に持つよう、一貫したアイデンティティで統一することが視覚的な印象を与える。したがって、バイウェイ周辺の施設や道路施設を設計段階で一貫性を保つことは大変重要である。どのバイウェイにもその地域に合ったテーマが必要であり、他のバイウェイと一線を画し、自らのアイデンティティを示す固有の要素を備えていなくてはならない。
テーマについての合意を得ることが難しいが、テーマはバイウェイとなるためにとても重要である。特に、バイウェイで最も重要なポイントのひとつが、両端にあるバイウェイの入り口で、訪れた人たちは、ここで特別なバイウェイに来たと教えられる。この第一印象が最後まで印象として強く焼きつけられる。帰宅後、友人や隣人にそこで充実した体験ができたと話をするか、行くだけの値打ちがないと伝えるか、ここが分かれ目となる。第一印象で失敗すると、期待通りの印象を与えることができなくなる。
研究データによると、特別な場所、特別なバイウェイに来たという第一印象は、5秒以内に決まってしまう。したがって、車で通過する最初の5秒で訪問者の心を捉えない限り、彼らの期待が満たされないまま旅行が終わってしまいかねない。一番大切なことは、利用者が価値ある旅行体験をすることであり、訪れた人たちが他の人にも見に行くといいよと勧めたくなる前向きな気持ちとともに帰宅することである。プランナーは自分たちが自己満足するものではなく、利用者のためのデザインを考えることが必要である。
 
その地域ならではの物語を伝え、体験を生み出す
講演(3)「インタープリテーションについて」

9月11日恵庭市民会館、出席者27名(恵庭シーニックプロジェクト、千歳青年会議所、支笏湖まちづくり機構、恵庭市役所など)
それぞれのバイウェイにとって最も重要なポイントは、訪れた人に、地元の人が伝えることのできる、その地域ならではの物語があることである。バイウェイを訪れる人々は、その地域でこれまでどんなことがあったのかを学び、その地域を特別な場所にしている興味深いものを見たいと思っている。友人や親戚が遠くから訪ねて来たとき、「どんな話を聞かせ、どこへ案内してあげますか。見せたいと思う特別なところはどこでしょう。どんな特別な場所に案内したいですか。皆さんの住んでいる地域の興味深いところとはどこですか」。これこそが、バイウェイが取り組むべき課題であり、これがインタープリテーションである。これを伝えるチャンスは一度だけであり、来てくれた時に、また
訪れたくなるような、あるいは、特別な場所だと人に勧めたくなるような物語を伝えることが必要である。訪れた人が記憶するのは聞いたことの10パーセント、読んだことは30パーセント、見たことは50パーセントを覚えている。そして、実際に行ったことは90パーセントを覚えている。このように、インタープリテーションは、ただ伝えるだけでなく、体験も生み出すものである。アメリカでは、先住民の壁画のレプリカを旅行者に触れさせたり、子ども達と一緒にパンを焼いたり、アートを作ったりということもインタープリテーションのひとつである。
 
目先の活動に追われて見失いがちなこと…
講演(4)「自己評価プログラムについて」

9月12日ニセコ東急ゴルフコース会議室、出席者10名(WAO、ニセコ国際の会など)
ABRCがバイウェイを訪れているうちに、バイウェイそれぞれに大きな較差があることに気がつき、このプログラムが開発された。これによって、バイウェイ組織などは自己評価を行うことで自分たちの状況を把握し、ABRCに対して進行状況の報告レポートとすることができる。さらに、ABRCが現状把握や将来まで見通しを詳細に検討した上、組織の現状を示すことができる。その質問は以下の9つとなっており、これらは、ごく基礎的な質問であるが、目先の活動に追われて見失いがちである。

【自己評価プログラムの9つの質問】
  1. あなた方はバイウェイ計画を持っていますか?
  2. あなた方のバイウェイには誰が訪れますか?
  3. 旅行者は、バイウェイを見つけることができますか?
  4. あなた方は、旅行客を迎えいれる準備ができていますか?
  5. 旅行者は、バイウェイストーリーについて学ぶ(知る)ことができますか?
  6. バイウェイの地域の固有特性をどうやって守り高めますか?
  7. あなた方は、どうやってバイウェイを宣伝し、誘致していますか?
  8. あなた方は、どうやってバイウェイに必要な運営活動資金を捻出しますか?
  9. 誰がバイウェイを管理運営しますか?
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