開催日▶︎2024年2月29日(木)
一般社団法人北海道開発技術センターは、積雪寒冷地域特有の諸問題について、政策の提言、調査研究、計画を行い、北海道ひいては国内外の積雪寒冷地域全体の発展にも寄与することを目的とした法人で、令和5年4月1日に創立40周年を迎えました。
このたび「北海道における持続可能な冬の暮らし」について考える機会として、令和5年7月より大学生等からアイデアを募りました。最終審査として令和6年2月29日に開催した「冬のくらしアイデアコンテスト発表会」では、全国31件の応募のうち一次審査を通過した5件のアイデアを学生たち自ら発表いただきました。厳正なる審査の結果、最優秀賞1組、優秀賞2組、入賞2組が決定しました。
主催一般社団法人 北海道開発技術センター
協力
株式会社 北海道新聞社
株式会社 エフエム北海道 AIR-G'
認定NPO法人 ほっかいどう学推進フォーラム
一般社団法人 シーニックバイウェイ支援センター
後援
国土交通省 北海道開発局
北海道
札幌市
結果発表
最優秀賞
愉雪の巡い(ゆうせつのうつろい)
札幌市立大学原 さとみさん、中川 斐世利さん、野々川 葉奈さん
北海道の雪の季節は約半年間に及びます。その間の雪の変化(うつろい)を楽しめるように、冬の公園を有効活用し、自然現象を生かしたアート空間を創るという提案です。特に雪解けの時期を魅力的にする自然現象に着目。大学構内の屋上で2カ月間、雪の観察を行い、温度、湿度、照度、紫外線による比較、雪の下に敷いた素材による比較から雪の状態、表情の違いを確認しました。
これを踏まえ、大通公園(西8~9丁目)を対象に4つのアイデアをまとめました。①「雪影の広場」:雪解けの時期に日が当たらず雪が残る地面に段階的に着色し、その変化で春の訪れを楽しむ、②「根びらきの小径」:春が近づき、木の根元から徐々に雪が解ける現象をもとに、木以外のさまざまな素材、色やかたちの根びらきを楽しむ、③「鳴き雪の径」:雪の状態や歩き方によって足音は多様。雪には遮音効果もあるので、雪の壁をつくり足音が聴こえやすい環境をつくって音を楽しむ、④「雪えくぼの丘」:雨や日射などの影響で雪面にできるたくさんのくぼみが「雪えくぼ」。熱伝導率などの異なるさまざまな素材を敷くことで雪面の凹凸を操作して柄を描く。柄のテーマ選択や作家、デザイナーの参加により多様で多くの人が携われる作品に。仮設、常設でも可能で観光に資する取り組みに発展します。
以上のアイデアは大通公園を想定しましたが、アイデアを選んでさまざまな公園で実施すれば、それぞれ特色ある楽しみ方ができると考えています。
優秀賞
第五の公営競技「競雪(けいせつ)」
北海道大学大学院鷲見 聡一朗さん、丸﨑 佳希さん
札幌市の今年度雪対策予算は264億円。一方、代表的な公営競技である競艇の近年の年間売上は2兆円規模で拡大基調にあります。北海道に冬開催の新たな公営競技を設立し、その税収を雪対策費に充てる「競雪(けいせつ)」を提案します。
これはロボットを介して雪山から流雪溝(投雪用の水路)に既定の重量の雪を運搬し、その速さを競います。レースは雪堆積場で開催し、6車立て・距離50mのコースを基本に大きさなど規定を設けたロボットが会場で遠隔操作されます。ネット投票、特にミッドナイトの時間帯をメーンに売上増を図る一方、公正・安全に競技が実施されるよう賞金制度や審判制度を設置。特長として「一口馬主」のように応援したいチームをサポート(投資)して配当を受け取る「サポーティングシステム」を導入します。売上金の75%を払戻金に、運営管理費、法定交付金に各10%、残りの5%を雪対策費に充てます。このアイデアの狙いは①雪対策費を全国規模で支え持続的に確保、②雪かきロボット技術の進展、③流雪溝活用など除排雪に関する意識向上、であり、売上規模の最も小さい競艇場を参考にすると約76億円を雪対策費に充てることができます。
優秀賞
Snow Safety Stick
茨城工業高等専門学校カモンパット・インタウォンさん、饗庭 陽月さん
茨城県民としては雪道転倒や屋根からの落雪などの事故について怖い印象もあります。雪の事故の死亡者、重傷者には高齢者が多いというデータもあり、タイにいる祖母と北海道の雪を楽しみたいという夢があるので、高齢者の生活に影響を及ぼす転倒と落雪という課題に向けてテクノロジーで解決する方法を考えました。
「スノー・セーフティー・スティック」(試作品は写真参照)は杖のように利用でき、転倒防止機能と落雪に遭った際に救難信号を発信する機能を持っています。「転倒防止機能」は杖の先端に取り付けたモーターで路面の摩擦係数を測定。回転するモーターの電流値から路面の凍結度を評価し、滑りやすい路面の場合にバイブレーションでユーザーに通知します。「落雪時の救難信号」はWi-Fiの電波強度から落雪に巻き込まれているかを判定し、判定の場合はサイレンを鳴らし、緊急連絡先にLINEで通知することも可能です。これはスマホに基地局から送られる電波について雪に触れることで電波の一部が反射されて弱まる特性を利用したもので、電波強度の微分値を算出し閾値以上であれば落雪と判定する仕組みです。
入賞
ゆきんこお野菜冬畑
北海商科大学安曇 灯里さん、伊藤 七海さん
「越冬野菜のインターネット販売」と「越冬野菜を埋める体験事業」について提案します。「ネット販売」は農家が副業的に担い、道内外の家族層を主な対象に8~11月に受注し、作物を育成・収穫。11~1月に野菜を雪に埋め、3~4月に掘り起こして発送します。「越冬野菜を埋める体験」は案内役を農家が担い、道内の家族層を対象に1~2月に実施。3~4月に掘り起こして購入者に発送します。ネット販売、体験提供ともに農家は購入者に畑の様子をメールで知らせたり、体験時には料理をふるまったりするなど交流面を大切にします。
期待される効果として①雪の活用の幅が広がる、②冬や雪に対する道民の消極的な価値観を「豊かな北海道を享受するのに大切な自然資源」に変える、③主業農家、準主業農家のいずれにも農家経営にプラス効果が見込め、農業人口増につながる、④都市と農村の交流が促進され、「3K」と言われる農業体験のハードルが下がる、などが挙げられます。
入賞
幻想的な空間で個別映画館-movie in ice-
大阪大学大内 明希さん大阪経済大学松平 和哉さん
雪のかまくら空間をつくり、内部で映画、映像作品を上映して新しい映像体験を提供する事業を提案します。家族や友人など少人数制のプライベート空間の規模で内部にプロジェクターを置き360度鑑賞可能な映像作品を上映。映画興行的には公開作品数が最も多い3~4月が適期で、多様な映像作品を紹介する場としての意義も大きいと考えます。
かまくらは①防音性が高い、②建設が迅速で容易、③鑑賞における豊かな没入感、④狭小空間で360度映像による臨場感、などが期待できます。ターゲットはコト消費を重視する夫婦などカップルで道央地域の観光客数をもとに試算した市場規模は約1079万人です。雪の建物の安全性については星野リゾート「アイスヴィレッジ」など前例があり、かまくらづくりには「さっぽろ雪まつり」解体後の雪の再利用も考えられます。かまくらの外側を生かしたプロジェクション・マッピング、音楽ライブ開催など多様な取り組みに発展する可能性があります。
審査員講評
審査委員長・高野 伸栄
北海道大学大学院工学研究院
土木工学部門 教授
「北海道開発」について振り返れば、戦後何もないところからインフラ整備を始めた「ハードの時代」、法律やルール面のしくみを整えた「ソフトの時代」を経て、現在は官民さまざまな立場が力を合わせ暮らしを豊かにする「共創の時代」になっています。この時代には、いかに人の心をつかみ、共感を得るか、「これならやってみよう」という思いを共有できるか、が開発技術にとって非常に重要です。
本日の発表もいかに審査員の心をわしづかみにするかが大きなポイントだったと思いますが、最優秀賞や優秀賞にならなかった方は、たまたま審査員のハートと相性が合わなかったのだと思っていただければいいのであって、決して落胆する必要はありません。審査結果は、審査員それぞれが評価を出して、それを総合して決定させていただきました。
われわれ審査員の心をつかんで離さなかった発表は多く、審査に大変苦労しました。発表者の方々にとって発表時間はあっという間だと思いますが、それぞれに準備は相当長い時間をかけてこられたと思います。非常に充実した内容を発表いただき、本当にありがとうございました。
柿崎 恒美
国土交通省北海道開発局
局長
発表を楽しく聞かせていただきました。北海道開発局は国直轄の公共事業を担っており、雪の関係では国道の除雪が最も大きな仕事です。楽しい仕事ではなく苦しいこともあり、特に雪で通行止めになることもあるので、市民生活のために頑張らなければならない仕事です。一方、今日の発表は、楽しんで取り組まれた非常にイノベーティブな提案が多かったと思います。除雪の方法も効率化を目指していますが、発表にはICTを活用したアイデアが多く、見習わなければなどと感じました。
北海道開発局は「北海道総合開発計画」に基づいて仕事をしていますが、計画では北海道の「食と観光」を強化していくことを目的としています。今回の発表にもこの「食と観光」につながるものが非常に多かったという印象を持ちました。われわれが仕事として取り組んできた「食と観光」の推進という方向が、若い方々にも受け入れられていると感じ、いろいろな意味で発見がありました。御礼を申し上げたいと思います。
宮口 宏夫
㈱北海道新聞社
代表取締役社長
大変楽しい時間をいただき、ありがとうございます。私の年代で、大学生が「ケイセツ」と言えば、蛍の光、窓の雪の「蛍雪」ですが、今時は公営ギャンブルの名前になる、ということで驚きましたし、若い人の頭の柔らかさを感じた次第です。
北海道新聞でも30、40年前まで、「ふゆトピア」(快適な冬の生活環境づくりを目指して旧・北海道開発庁が推進した取り組み)について盛んに特集していた時期がありました。そのときに提唱された「利雪」「克雪」という言葉には、今思えば、どこか肩に力が入った、役所っぽいところが感じられますが、今日の発表を聞くと「雪を楽しむ」ところから入っておられると感じます。楽しむ雪であれば「楽雪」、雪や寒さをめでるのであれば「愛雪」という言葉がふさわしいかもしれません。
今後、北海道特有の雪と寒さを暮らしのなかでどのように親和性をもって楽しんでいくのか。このことを追求する大事さを今日は学ばせていただいたと思います。本当にありがとうございました。
鈴井 貴之
Creative Office CUE
タレント
驚くほど柔軟な発想で、道民にとって一見ネガティブな雪の世界をどうポジティブに転換するかについてプレゼンいただき、さすがだと思いました。特に3月のドロドロの雪解けの時期もしっかり題材にして可能性を考えてくださったことに感銘を受けました。
個人的なことですが、13年前から赤平市で田舎暮らしをしています。2ヘクタールの森のなかで5匹の大きな犬たちと暮らしているのですが、3月ごろは非常に大切な時期で、木は乾燥して間伐しやすいなどやることはたくさんあって毎日忙しく過ごします。また、犬たちにとっても雪の世界は快適で北海道ほど最高の場所はないと感じています。以前は冬は嫌でならなかったのに、田舎暮らしでそうした発見ができるようになったのです。しかし、若いみなさんは今の時点で北海道の冬のさまざまな素晴らしさに着眼してアイデアを出してくださり、本当に感心しました。
今回のコンテストのような取り組みが今後も継続されれば、北海道の冬は一層豊かになるのではないかと思います。今回は応募31件のうち17件が道外からで、本日の発表5組のうち2組が道外の方でした。道外の方々が北海道の冬を考えてくださることに本当に感謝したいと思います。
倉内 公嘉
(一社)北海道開発技術センター
理事長
主催者としましては、これほど盛り上がるコンテストになるとは予想していませんでした。これも発表者のみなさんのクリーンで充実した発表のおかげです。感謝いたします。
私の審査の観点は「積雪寒冷地の課題を実感して、自分のものとして考え、発表しているか」ということでした。ですので、今回初めて北海道に来られたという大阪大学のご発表(「幻想的な空間で個別映画館」)の方にとっては少し酷なことだったかな、と思います。
北海道商科大学のご発表(「ゆきんこお野菜冬畑」)は農家の課題を踏まえた真面目な提案でしたが、肝心の越冬野菜の魅力の伝え方が少し弱いなどもう一工夫あればと感じました。
茨城高専のご発表(「Snow Safety Stick」)は、すでに実物の試作品を持参してプレゼンに臨んだという真面目さが非常に評価されたと思います。北海道大学大学院の方のご発表(「第五の公営競技『競雪』」)は、コンテストの趣旨を十分理解して冒頭コント風にやってくださいました。除雪の課題をしっかり捉えたものでしたが、もう少し演技力があれば(笑)もっと評価されたと思います。札幌市立大学のご発表(「愉雪の巡い」)は、校内での実験を踏まえたもので、雪の音の録音の紹介なども含めて四季を感じる生活の大切さが伝わる内容でした。雪解けの様子を時間追って味わうことは子どもたちの情操教育にもつながるのではと思いました。
最後に、発表者のみなさん、審査員の先生方、そして会場のみなさん、本当に良い会となりました。ありがとうございました。
受賞おめでとうございます。次回のアイデアコンテストもお楽しみに!
©2023 Hokkaido Development Engineering Center All right reserved.
一般社団法人北海道開発技術センターは、積雪寒冷地域特有の諸問題について、政策の提言、調査研究、計画を行い、北海道ひいては国内外の積雪寒冷地域全体の発展にも寄与することを目的とした法人で、令和5年4月1日に創立40周年を迎えました。
このたび「北海道における持続可能な冬の暮らし」について考える機会として、令和5年7月より大学生等からアイデアを募りました。最終審査として令和6年2月29日に開催した「冬のくらしアイデアコンテスト発表会」では、全国31件の応募のうち一次審査を通過した5件のアイデアを学生たち自ら発表いただきました。厳正なる審査の結果、最優秀賞1組、優秀賞2組、入賞2組が決定しました。
このたび「北海道における持続可能な冬の暮らし」について考える機会として、令和5年7月より大学生等からアイデアを募りました。最終審査として令和6年2月29日に開催した「冬のくらしアイデアコンテスト発表会」では、全国31件の応募のうち一次審査を通過した5件のアイデアを学生たち自ら発表いただきました。厳正なる審査の結果、最優秀賞1組、優秀賞2組、入賞2組が決定しました。
主催一般社団法人 北海道開発技術センター
協力
株式会社 北海道新聞社
株式会社 エフエム北海道 AIR-G'
認定NPO法人 ほっかいどう学推進フォーラム
一般社団法人 シーニックバイウェイ支援センター
後援
国土交通省 北海道開発局
北海道
札幌市
結果発表
最優秀賞
愉雪の巡い(ゆうせつのうつろい)札幌市立大学原 さとみさん、中川 斐世利さん、野々川 葉奈さん
北海道の雪の季節は約半年間に及びます。その間の雪の変化(うつろい)を楽しめるように、冬の公園を有効活用し、自然現象を生かしたアート空間を創るという提案です。特に雪解けの時期を魅力的にする自然現象に着目。大学構内の屋上で2カ月間、雪の観察を行い、温度、湿度、照度、紫外線による比較、雪の下に敷いた素材による比較から雪の状態、表情の違いを確認しました。
これを踏まえ、大通公園(西8~9丁目)を対象に4つのアイデアをまとめました。①「雪影の広場」:雪解けの時期に日が当たらず雪が残る地面に段階的に着色し、その変化で春の訪れを楽しむ、②「根びらきの小径」:春が近づき、木の根元から徐々に雪が解ける現象をもとに、木以外のさまざまな素材、色やかたちの根びらきを楽しむ、③「鳴き雪の径」:雪の状態や歩き方によって足音は多様。雪には遮音効果もあるので、雪の壁をつくり足音が聴こえやすい環境をつくって音を楽しむ、④「雪えくぼの丘」:雨や日射などの影響で雪面にできるたくさんのくぼみが「雪えくぼ」。熱伝導率などの異なるさまざまな素材を敷くことで雪面の凹凸を操作して柄を描く。柄のテーマ選択や作家、デザイナーの参加により多様で多くの人が携われる作品に。仮設、常設でも可能で観光に資する取り組みに発展します。
以上のアイデアは大通公園を想定しましたが、アイデアを選んでさまざまな公園で実施すれば、それぞれ特色ある楽しみ方ができると考えています。
これを踏まえ、大通公園(西8~9丁目)を対象に4つのアイデアをまとめました。①「雪影の広場」:雪解けの時期に日が当たらず雪が残る地面に段階的に着色し、その変化で春の訪れを楽しむ、②「根びらきの小径」:春が近づき、木の根元から徐々に雪が解ける現象をもとに、木以外のさまざまな素材、色やかたちの根びらきを楽しむ、③「鳴き雪の径」:雪の状態や歩き方によって足音は多様。雪には遮音効果もあるので、雪の壁をつくり足音が聴こえやすい環境をつくって音を楽しむ、④「雪えくぼの丘」:雨や日射などの影響で雪面にできるたくさんのくぼみが「雪えくぼ」。熱伝導率などの異なるさまざまな素材を敷くことで雪面の凹凸を操作して柄を描く。柄のテーマ選択や作家、デザイナーの参加により多様で多くの人が携われる作品に。仮設、常設でも可能で観光に資する取り組みに発展します。
以上のアイデアは大通公園を想定しましたが、アイデアを選んでさまざまな公園で実施すれば、それぞれ特色ある楽しみ方ができると考えています。
優秀賞
第五の公営競技「競雪(けいせつ)」北海道大学大学院鷲見 聡一朗さん、丸﨑 佳希さん
札幌市の今年度雪対策予算は264億円。一方、代表的な公営競技である競艇の近年の年間売上は2兆円規模で拡大基調にあります。北海道に冬開催の新たな公営競技を設立し、その税収を雪対策費に充てる「競雪(けいせつ)」を提案します。
これはロボットを介して雪山から流雪溝(投雪用の水路)に既定の重量の雪を運搬し、その速さを競います。レースは雪堆積場で開催し、6車立て・距離50mのコースを基本に大きさなど規定を設けたロボットが会場で遠隔操作されます。ネット投票、特にミッドナイトの時間帯をメーンに売上増を図る一方、公正・安全に競技が実施されるよう賞金制度や審判制度を設置。特長として「一口馬主」のように応援したいチームをサポート(投資)して配当を受け取る「サポーティングシステム」を導入します。売上金の75%を払戻金に、運営管理費、法定交付金に各10%、残りの5%を雪対策費に充てます。このアイデアの狙いは①雪対策費を全国規模で支え持続的に確保、②雪かきロボット技術の進展、③流雪溝活用など除排雪に関する意識向上、であり、売上規模の最も小さい競艇場を参考にすると約76億円を雪対策費に充てることができます。
これはロボットを介して雪山から流雪溝(投雪用の水路)に既定の重量の雪を運搬し、その速さを競います。レースは雪堆積場で開催し、6車立て・距離50mのコースを基本に大きさなど規定を設けたロボットが会場で遠隔操作されます。ネット投票、特にミッドナイトの時間帯をメーンに売上増を図る一方、公正・安全に競技が実施されるよう賞金制度や審判制度を設置。特長として「一口馬主」のように応援したいチームをサポート(投資)して配当を受け取る「サポーティングシステム」を導入します。売上金の75%を払戻金に、運営管理費、法定交付金に各10%、残りの5%を雪対策費に充てます。このアイデアの狙いは①雪対策費を全国規模で支え持続的に確保、②雪かきロボット技術の進展、③流雪溝活用など除排雪に関する意識向上、であり、売上規模の最も小さい競艇場を参考にすると約76億円を雪対策費に充てることができます。
優秀賞
Snow Safety Stick茨城工業高等専門学校カモンパット・インタウォンさん、饗庭 陽月さん
茨城県民としては雪道転倒や屋根からの落雪などの事故について怖い印象もあります。雪の事故の死亡者、重傷者には高齢者が多いというデータもあり、タイにいる祖母と北海道の雪を楽しみたいという夢があるので、高齢者の生活に影響を及ぼす転倒と落雪という課題に向けてテクノロジーで解決する方法を考えました。
「スノー・セーフティー・スティック」(試作品は写真参照)は杖のように利用でき、転倒防止機能と落雪に遭った際に救難信号を発信する機能を持っています。「転倒防止機能」は杖の先端に取り付けたモーターで路面の摩擦係数を測定。回転するモーターの電流値から路面の凍結度を評価し、滑りやすい路面の場合にバイブレーションでユーザーに通知します。「落雪時の救難信号」はWi-Fiの電波強度から落雪に巻き込まれているかを判定し、判定の場合はサイレンを鳴らし、緊急連絡先にLINEで通知することも可能です。これはスマホに基地局から送られる電波について雪に触れることで電波の一部が反射されて弱まる特性を利用したもので、電波強度の微分値を算出し閾値以上であれば落雪と判定する仕組みです。
「スノー・セーフティー・スティック」(試作品は写真参照)は杖のように利用でき、転倒防止機能と落雪に遭った際に救難信号を発信する機能を持っています。「転倒防止機能」は杖の先端に取り付けたモーターで路面の摩擦係数を測定。回転するモーターの電流値から路面の凍結度を評価し、滑りやすい路面の場合にバイブレーションでユーザーに通知します。「落雪時の救難信号」はWi-Fiの電波強度から落雪に巻き込まれているかを判定し、判定の場合はサイレンを鳴らし、緊急連絡先にLINEで通知することも可能です。これはスマホに基地局から送られる電波について雪に触れることで電波の一部が反射されて弱まる特性を利用したもので、電波強度の微分値を算出し閾値以上であれば落雪と判定する仕組みです。
入賞
ゆきんこお野菜冬畑北海商科大学安曇 灯里さん、伊藤 七海さん
「越冬野菜のインターネット販売」と「越冬野菜を埋める体験事業」について提案します。「ネット販売」は農家が副業的に担い、道内外の家族層を主な対象に8~11月に受注し、作物を育成・収穫。11~1月に野菜を雪に埋め、3~4月に掘り起こして発送します。「越冬野菜を埋める体験」は案内役を農家が担い、道内の家族層を対象に1~2月に実施。3~4月に掘り起こして購入者に発送します。ネット販売、体験提供ともに農家は購入者に畑の様子をメールで知らせたり、体験時には料理をふるまったりするなど交流面を大切にします。
期待される効果として①雪の活用の幅が広がる、②冬や雪に対する道民の消極的な価値観を「豊かな北海道を享受するのに大切な自然資源」に変える、③主業農家、準主業農家のいずれにも農家経営にプラス効果が見込め、農業人口増につながる、④都市と農村の交流が促進され、「3K」と言われる農業体験のハードルが下がる、などが挙げられます。
期待される効果として①雪の活用の幅が広がる、②冬や雪に対する道民の消極的な価値観を「豊かな北海道を享受するのに大切な自然資源」に変える、③主業農家、準主業農家のいずれにも農家経営にプラス効果が見込め、農業人口増につながる、④都市と農村の交流が促進され、「3K」と言われる農業体験のハードルが下がる、などが挙げられます。
入賞
幻想的な空間で個別映画館-movie in ice-大阪大学大内 明希さん大阪経済大学松平 和哉さん
雪のかまくら空間をつくり、内部で映画、映像作品を上映して新しい映像体験を提供する事業を提案します。家族や友人など少人数制のプライベート空間の規模で内部にプロジェクターを置き360度鑑賞可能な映像作品を上映。映画興行的には公開作品数が最も多い3~4月が適期で、多様な映像作品を紹介する場としての意義も大きいと考えます。
かまくらは①防音性が高い、②建設が迅速で容易、③鑑賞における豊かな没入感、④狭小空間で360度映像による臨場感、などが期待できます。ターゲットはコト消費を重視する夫婦などカップルで道央地域の観光客数をもとに試算した市場規模は約1079万人です。雪の建物の安全性については星野リゾート「アイスヴィレッジ」など前例があり、かまくらづくりには「さっぽろ雪まつり」解体後の雪の再利用も考えられます。かまくらの外側を生かしたプロジェクション・マッピング、音楽ライブ開催など多様な取り組みに発展する可能性があります。
かまくらは①防音性が高い、②建設が迅速で容易、③鑑賞における豊かな没入感、④狭小空間で360度映像による臨場感、などが期待できます。ターゲットはコト消費を重視する夫婦などカップルで道央地域の観光客数をもとに試算した市場規模は約1079万人です。雪の建物の安全性については星野リゾート「アイスヴィレッジ」など前例があり、かまくらづくりには「さっぽろ雪まつり」解体後の雪の再利用も考えられます。かまくらの外側を生かしたプロジェクション・マッピング、音楽ライブ開催など多様な取り組みに発展する可能性があります。
審査員講評
審査委員長・高野 伸栄
北海道大学大学院工学研究院
土木工学部門 教授
土木工学部門 教授
「北海道開発」について振り返れば、戦後何もないところからインフラ整備を始めた「ハードの時代」、法律やルール面のしくみを整えた「ソフトの時代」を経て、現在は官民さまざまな立場が力を合わせ暮らしを豊かにする「共創の時代」になっています。この時代には、いかに人の心をつかみ、共感を得るか、「これならやってみよう」という思いを共有できるか、が開発技術にとって非常に重要です。
本日の発表もいかに審査員の心をわしづかみにするかが大きなポイントだったと思いますが、最優秀賞や優秀賞にならなかった方は、たまたま審査員のハートと相性が合わなかったのだと思っていただければいいのであって、決して落胆する必要はありません。審査結果は、審査員それぞれが評価を出して、それを総合して決定させていただきました。
われわれ審査員の心をつかんで離さなかった発表は多く、審査に大変苦労しました。発表者の方々にとって発表時間はあっという間だと思いますが、それぞれに準備は相当長い時間をかけてこられたと思います。非常に充実した内容を発表いただき、本当にありがとうございました。
本日の発表もいかに審査員の心をわしづかみにするかが大きなポイントだったと思いますが、最優秀賞や優秀賞にならなかった方は、たまたま審査員のハートと相性が合わなかったのだと思っていただければいいのであって、決して落胆する必要はありません。審査結果は、審査員それぞれが評価を出して、それを総合して決定させていただきました。
われわれ審査員の心をつかんで離さなかった発表は多く、審査に大変苦労しました。発表者の方々にとって発表時間はあっという間だと思いますが、それぞれに準備は相当長い時間をかけてこられたと思います。非常に充実した内容を発表いただき、本当にありがとうございました。
柿崎 恒美
国土交通省北海道開発局
局長
局長
発表を楽しく聞かせていただきました。北海道開発局は国直轄の公共事業を担っており、雪の関係では国道の除雪が最も大きな仕事です。楽しい仕事ではなく苦しいこともあり、特に雪で通行止めになることもあるので、市民生活のために頑張らなければならない仕事です。一方、今日の発表は、楽しんで取り組まれた非常にイノベーティブな提案が多かったと思います。除雪の方法も効率化を目指していますが、発表にはICTを活用したアイデアが多く、見習わなければなどと感じました。
北海道開発局は「北海道総合開発計画」に基づいて仕事をしていますが、計画では北海道の「食と観光」を強化していくことを目的としています。今回の発表にもこの「食と観光」につながるものが非常に多かったという印象を持ちました。われわれが仕事として取り組んできた「食と観光」の推進という方向が、若い方々にも受け入れられていると感じ、いろいろな意味で発見がありました。御礼を申し上げたいと思います。
北海道開発局は「北海道総合開発計画」に基づいて仕事をしていますが、計画では北海道の「食と観光」を強化していくことを目的としています。今回の発表にもこの「食と観光」につながるものが非常に多かったという印象を持ちました。われわれが仕事として取り組んできた「食と観光」の推進という方向が、若い方々にも受け入れられていると感じ、いろいろな意味で発見がありました。御礼を申し上げたいと思います。
宮口 宏夫
㈱北海道新聞社
代表取締役社長
代表取締役社長
大変楽しい時間をいただき、ありがとうございます。私の年代で、大学生が「ケイセツ」と言えば、蛍の光、窓の雪の「蛍雪」ですが、今時は公営ギャンブルの名前になる、ということで驚きましたし、若い人の頭の柔らかさを感じた次第です。
北海道新聞でも30、40年前まで、「ふゆトピア」(快適な冬の生活環境づくりを目指して旧・北海道開発庁が推進した取り組み)について盛んに特集していた時期がありました。そのときに提唱された「利雪」「克雪」という言葉には、今思えば、どこか肩に力が入った、役所っぽいところが感じられますが、今日の発表を聞くと「雪を楽しむ」ところから入っておられると感じます。楽しむ雪であれば「楽雪」、雪や寒さをめでるのであれば「愛雪」という言葉がふさわしいかもしれません。
今後、北海道特有の雪と寒さを暮らしのなかでどのように親和性をもって楽しんでいくのか。このことを追求する大事さを今日は学ばせていただいたと思います。本当にありがとうございました。
北海道新聞でも30、40年前まで、「ふゆトピア」(快適な冬の生活環境づくりを目指して旧・北海道開発庁が推進した取り組み)について盛んに特集していた時期がありました。そのときに提唱された「利雪」「克雪」という言葉には、今思えば、どこか肩に力が入った、役所っぽいところが感じられますが、今日の発表を聞くと「雪を楽しむ」ところから入っておられると感じます。楽しむ雪であれば「楽雪」、雪や寒さをめでるのであれば「愛雪」という言葉がふさわしいかもしれません。
今後、北海道特有の雪と寒さを暮らしのなかでどのように親和性をもって楽しんでいくのか。このことを追求する大事さを今日は学ばせていただいたと思います。本当にありがとうございました。
鈴井 貴之
Creative Office CUE
タレント
タレント
驚くほど柔軟な発想で、道民にとって一見ネガティブな雪の世界をどうポジティブに転換するかについてプレゼンいただき、さすがだと思いました。特に3月のドロドロの雪解けの時期もしっかり題材にして可能性を考えてくださったことに感銘を受けました。
個人的なことですが、13年前から赤平市で田舎暮らしをしています。2ヘクタールの森のなかで5匹の大きな犬たちと暮らしているのですが、3月ごろは非常に大切な時期で、木は乾燥して間伐しやすいなどやることはたくさんあって毎日忙しく過ごします。また、犬たちにとっても雪の世界は快適で北海道ほど最高の場所はないと感じています。以前は冬は嫌でならなかったのに、田舎暮らしでそうした発見ができるようになったのです。しかし、若いみなさんは今の時点で北海道の冬のさまざまな素晴らしさに着眼してアイデアを出してくださり、本当に感心しました。
今回のコンテストのような取り組みが今後も継続されれば、北海道の冬は一層豊かになるのではないかと思います。今回は応募31件のうち17件が道外からで、本日の発表5組のうち2組が道外の方でした。道外の方々が北海道の冬を考えてくださることに本当に感謝したいと思います。
個人的なことですが、13年前から赤平市で田舎暮らしをしています。2ヘクタールの森のなかで5匹の大きな犬たちと暮らしているのですが、3月ごろは非常に大切な時期で、木は乾燥して間伐しやすいなどやることはたくさんあって毎日忙しく過ごします。また、犬たちにとっても雪の世界は快適で北海道ほど最高の場所はないと感じています。以前は冬は嫌でならなかったのに、田舎暮らしでそうした発見ができるようになったのです。しかし、若いみなさんは今の時点で北海道の冬のさまざまな素晴らしさに着眼してアイデアを出してくださり、本当に感心しました。
今回のコンテストのような取り組みが今後も継続されれば、北海道の冬は一層豊かになるのではないかと思います。今回は応募31件のうち17件が道外からで、本日の発表5組のうち2組が道外の方でした。道外の方々が北海道の冬を考えてくださることに本当に感謝したいと思います。
倉内 公嘉
(一社)北海道開発技術センター
理事長
理事長
主催者としましては、これほど盛り上がるコンテストになるとは予想していませんでした。これも発表者のみなさんのクリーンで充実した発表のおかげです。感謝いたします。
私の審査の観点は「積雪寒冷地の課題を実感して、自分のものとして考え、発表しているか」ということでした。ですので、今回初めて北海道に来られたという大阪大学のご発表(「幻想的な空間で個別映画館」)の方にとっては少し酷なことだったかな、と思います。
北海道商科大学のご発表(「ゆきんこお野菜冬畑」)は農家の課題を踏まえた真面目な提案でしたが、肝心の越冬野菜の魅力の伝え方が少し弱いなどもう一工夫あればと感じました。
茨城高専のご発表(「Snow Safety Stick」)は、すでに実物の試作品を持参してプレゼンに臨んだという真面目さが非常に評価されたと思います。北海道大学大学院の方のご発表(「第五の公営競技『競雪』」)は、コンテストの趣旨を十分理解して冒頭コント風にやってくださいました。除雪の課題をしっかり捉えたものでしたが、もう少し演技力があれば(笑)もっと評価されたと思います。札幌市立大学のご発表(「愉雪の巡い」)は、校内での実験を踏まえたもので、雪の音の録音の紹介なども含めて四季を感じる生活の大切さが伝わる内容でした。雪解けの様子を時間追って味わうことは子どもたちの情操教育にもつながるのではと思いました。
最後に、発表者のみなさん、審査員の先生方、そして会場のみなさん、本当に良い会となりました。ありがとうございました。
私の審査の観点は「積雪寒冷地の課題を実感して、自分のものとして考え、発表しているか」ということでした。ですので、今回初めて北海道に来られたという大阪大学のご発表(「幻想的な空間で個別映画館」)の方にとっては少し酷なことだったかな、と思います。
北海道商科大学のご発表(「ゆきんこお野菜冬畑」)は農家の課題を踏まえた真面目な提案でしたが、肝心の越冬野菜の魅力の伝え方が少し弱いなどもう一工夫あればと感じました。
茨城高専のご発表(「Snow Safety Stick」)は、すでに実物の試作品を持参してプレゼンに臨んだという真面目さが非常に評価されたと思います。北海道大学大学院の方のご発表(「第五の公営競技『競雪』」)は、コンテストの趣旨を十分理解して冒頭コント風にやってくださいました。除雪の課題をしっかり捉えたものでしたが、もう少し演技力があれば(笑)もっと評価されたと思います。札幌市立大学のご発表(「愉雪の巡い」)は、校内での実験を踏まえたもので、雪の音の録音の紹介なども含めて四季を感じる生活の大切さが伝わる内容でした。雪解けの様子を時間追って味わうことは子どもたちの情操教育にもつながるのではと思いました。
最後に、発表者のみなさん、審査員の先生方、そして会場のみなさん、本当に良い会となりました。ありがとうございました。
受賞おめでとうございます。次回のアイデアコンテストもお楽しみに!